T銀など弱い銀行は処理競争から脱落し、これが信用秩序を乱すのは必至。
となれば、大蔵省としては護送船団方式で弱い銀行の「船脚」に合わせて、不良債権処理の工程表を策定するに越したことはない。 こうした「先送り令」によって金融システムには98年秋に事態の好転(96年6月の「勘違い」)を受けて、H首相は財政構造改革ならびに金融ビッグバンを高らかに宣言した。
だが、これがそれまで封印あるいは潜伏していた「資産デフレ」を地表に噴出させることとなった。 一つは消費税引き上げなどの財政緊縮化であり、これが「逆資産効果」を顕在化させ、デフレ経済を現出させた。
もう一つはビッグバン宣言が日本の金融機関に別世紀の生き残り戦略を迫ってきたため、不良債権の早期処理を中心とする財務健全化への行動を促してきた。 90年代後半の信用膨張の収縮化の動きだ。
つまり、「貸し渋り効果」だ。 もはや、金融ビッグバンを「先送り」するわけにはいかない。

それでなくとも、日本の金融システムの劣化はこれ以上放置できない。 しかも、95年6月には円安の加速化が世界的恐慌の引き金になりかねないとの認識が国際的に強まり、その「一丁目一番地」が日本の不良債権の早期処理だと米国政参謀本部の愚を思い起させる。
結語―失敗の大清算を教訓に不良債権が在庫として大量に残留するところとなったから、この土地在庫が不動産市場に売り圧力をかけ続けてきた。 つまり、地価が90年代後半になっても「底値」がみえない情況である。
この結果、不良債権はどんどん増大する。 だが、この重圧にもかかわらず、金融機関も大蔵省も政府も事態の深刻化を懸念などまったくしなかった。
「資産デフレ」の逆資産効果は財政金融政策で封印されていたし、しかも98年の円安化(100円←110円)で景気も上昇に乗ってきたから、96年6月に政府・大蔵省も多くのエコノミストも住専関連法の成立をみて、不良債権問題は終わったとの「勘違い」を犯してしまった。 だから、「右一肩上がり神話」に汚染され、「無謬性」を信じ込む大蔵官僚が住専以外の不良債権は無用な混乱を起こさずに、従来の護送船団方式でゆっくりと処理すればよいと考えたのも当然の成り行きだった。
しかし、真の金融司令塔であれば、90年代に起きた「資産デフレ」の猛威に気づき、早期処理を断行しておくべきだった。 それは戦況の悪化を隠蔽し、ノーテンキな大本営発表を繰り返し、戦力の逐次投入を続け、犠牲を大きくしていった太平洋戦争時の、かくして、大蔵省の「不良債権先送り令」は完全な失態を内外に明白にさらすところとなった。
問題はこうした不良債権の短期一括処理がデフレ経済の深化のもとで行われねばならないことだ。 それはバブル期の膨張信用の収縮過程(貸し渋り)を意味するからだ。
それは異常に膨張した信用の「正常化過程」だから、「資産デフレ」の清算をするには回避できないプロセスである。 府が考えるに至り、緊急の日米亜4か国の蔵相代理通貨会合が東京で開かれ、日本にとって不良債権処理はもはや先送りも隠蔽も漸進的な実行も不可能になった。
できるし、うまくいけば教訓に転化さえできるのである。 大蔵省・失敗の構図問題はこの過程が金融機関の整理・淘汰を必然的に伴なわざるをえないということだ。
このような過酷な修羅場を迎えねばならない基本的原因が90年代の金融行政の大失敗に起因することを明確にしておかねばなるまい。 というのは、金融再興にあたって透明性、公正性、一貫性を担保する皿世紀型金融行政を構築するには、帥年代の金融失政の経緯について総括しておく必要があるからだ。
その限り、「大蔵省の大失敗」は未来創造のコストとせめての慰めに経済は何のためにあるのか1998年初めから日本経済が世界の大きな関心を集め、その先行きについて、また日本発の世界恐慌の恐れについて諸外国の政府や国際的な経済機関から深刻な懸念が表明されているなかで、日本経済は欧米諸国の経済とは根本的に異なるとする見方が、ますます広く受け入れられるようになっている。 日本は市場メカニズムを第一義とせずに経済的繁栄を実現する道を見つけたのだとする説は、もはや90年代ほど論議をよぶものではなくなり、内外の専門家から暗黙のうちに認められている。

しかし、具体的に何が異なるのかとなると、いまだにかなり混乱がみられる。 こうした混乱を整理することが、現在、急務となっている。
それがなされないかぎり、アジアの金融危機を完全に理解することは不可能だ。 なによりも、日本経済の活力を将来も維持していくためにどのような方策が考えられるか理解するために戦後日本の経済エリートたちは、強い産業を築くことも、しかるべき分析が必要とされているのである。
それが行きづまった今、改めて問わなければならないことを第一義としてきた。 日本経済を欧米諸国の経済と決定的に異なるものにしている点を簡単にまとめるとすれば、二つの表現が可能である。
一つは民間部門と公共部門との明確な境界がないということ、もう一つは、与信の管理が収益よりも、むしろ産業の強さや拡大に注目して行なわれるということだ。 以下にみていくように、二つの表現は実は同じことを語っているのである。
一般に認められている経済理論のベースになっている(欧米資本主義の)標準的な経済には、企業家や株主が所有する企業で構成される民間部門と、政府の管理する公共部門がある。 民間部門の事業体は、投資した資本から利益を上げることを目的に運営され、公共部門の機関は、民間部門の混乱を防ぐ法的規制を実施するとともに、公益サービスを提供する事業体を運営する。
民間の事業体が投資できるよう手助けする金融機関は、借り入れを望む企業が遂行するプロジェクトの予想収益性を査定し、それに基日本経済の特異な側面官と民の境界があいまいな日本欧米人、とりわけアメリカ政府の目には、通産省や大蔵省といった日本の政府機関は、民間企業に手を貸しすぎてきたと映っている。 また、日本の政府官僚は、強大な権力を持ち、なにかと民間に介入したがる存在として、しばしば描き出される。
しかし、これは実に表面的な単純すぎる見方である。 日本の政府官僚がこれまで裁量によって重要な調整機能を果たしてきたこと、また現在も果たしていることに疑問の余地はない。

しかし、それは業界団体をはじめとする強力な仲介機関のおかげではじめて可能になっていることだ。 日本の企業間の関係は、経済の教科書のベースになっている標準的な経済の状況とは根本的に異なっている。
特殊な形で寄り集まって、独立性を保ちながらも、概して共通の大義に縛られている。 民間部門と公共部門の融合をはっきり理解するためには、企業と政府機関との関係よりも、動いていることは、内側を覗いたことのある人ならだれでも知っている。
官僚は規制官ではなく運動の参加者づいて融資の決定を行なう。 民間企業はたがいに競争し、この競争が製品の価格を決定する一要因となる。
かりに政府機関(公共部門)が、資源や顧客へのアクセスなどの点で一部の企業に有利な条件を取り決めたとしたら、一般の言葉でそれを「ひいき」という。

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